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大阪高等裁判所 昭和62年(ラ)287号 決定

抗告人

瀬上憲昌

右代理人弁護士

河上泰廣

右同

馬場康吏

右同

辻田博子

大阪地方裁判所堺支部昭和六〇年(ケ)第六三〇号不動産競売事件につき、同裁判所が昭和六二年五月六日に言渡した売却不許可決定に対し、抗告人から執行抗告の申立があつたので、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

原決定を取り消す。

本件を大阪地方裁判所堺支部に差し戻す。

理由

一本件抗告の趣旨及び理由は、別紙執行抗告状及び理由書に記載のとおりである。

二当裁判所の判断

1  一件記録によれば、次の事実が認められる。

(一)  本件売却にかかる物件(土地及び建物)について、原裁判所は昭和六二年一月二九日、期間入札売却実施命令をなし、入札期間を同年三月三〇日から同年四月六日午後五時まで、開札期日を同年四月九日午前一〇時、開札場所を大阪地方裁判所堺支部売却場、売却決定期日を同年四月一五日午前一〇時と定め(但し、右売却決定期日は同年四月一四日に新たに同年五月六日午前一〇時と変更された)、同年二月二六日右期間入札の通知が各利害関係人に対し普通郵便をもつてなされたほか、同年三月一二日右期間入札の公告がなされた。

(二)  株式会社住宅総合センター(以下、「センター」という。)は、本件物件に対する抵当権者で且つ差押債権者であり、抗告人は同様抵当権者であり、共に利害関係人である。

(三)  昭和六二年四月九日午前一〇時の開札期日において、原裁判所所属の執行官が同庁書記官の立会の下で本件の入札書を開札したところ、センターと抗告人の両名がそれぞれ八三〇万円の同額の最高価額で買受申出をしていた。そこで執行官は、同日午前一〇時三〇分、右開札の結果、同額の最高価買受申出人が右二名であることを同場内において口頭で告知し、直ちに右両名に追加入札をさせることを決め、入札締切時刻を同日午前一一時と指定した。ところが、センターは右開札期日に立会していなかつたので、立会していた抗告人のみが右追加入札をなし、右締切時刻後、執行官において開札したところ、右入札額は当初の入札額と同額の八三〇万円であつた。

(四)  そこで、執行官は、右追加入札額は当初の入札額と同額であり、しかも当初の入札結果判明後の入札であるから、センターの当初入札も抗告人の追加入札もいずれも有効であり、したがつて最高価買受申出人が二人以上ある場合に変動がなく、これによつては最高価買受申出人を決定できない場合に該ると判断し、くじによつてセンターと抗告人のいずれかを最高価買受申出人に決定することを決め、この旨をその場で宣し、直ちに書記官立会のうえくじを実施した。

(五)  その際、抗告人は、執行官の右措置に対して、抗告人のなした追加入札額は当初入札額に満たない価額ではないから有効である、センターは不立会であるから失格である旨申入れたが、執行官がこれを受け入れなかつたので、やむなく右くじに応じ、執行官作成のくじに丸印を付したところ、抗告人が外れ、センターが当選したので、執行官はセンターを最高価買受申出人と決定してその旨を宣し、期間入札調書にその旨を記載した。

(六)  原裁判所は、昭和六二年五月六日の売却決定期日において、本件の場合、センターは開札期日に立会せず、しかも追加入札もしなかつたのであるから同人は追加入札の権利を放棄したものとみなすべきであり、唯一人適法に追加入札をした抗告人を最高価買受申出人とすべきであること、及び本件の場合は民事執行規則(以下「規則」という。)四九条により準用される同規則四二条二項所定のくじを実施すべき場合に該らないことを理由として、本件は売却の手続に重大な誤りがあるとして民事執行法(以下「法」という。)七一条七号に基づき、センターに対して売却不許可の決定を言渡した。

(七)  なお、右売却不許可決定の言渡に先立ち、抗告人は原裁判所に対し、同年四月一五日付をもつて、自己に売却許可決定をなすべき旨の意見書を提出し、右売却決定期日に出頭した。

2  抗告人は、同人は本件開札期日において、本来、執行官から最高価買受申出人として呼上げを受けるべき者であつたから、原裁判所としては、センターに対する売却不許可決定と同時に抗告人に対する売却許可決定をすべきであるのに、センターに対する売却不許可決定のみをなしたが、これは実質上抗告人に対して不許可事由がないのに黙示の不許可決定をなしたものに等しく、したがつて右決定には重大な違法があるからこれを取り消し、改めてセンターに対する売却不許可決定と同時に抗告人に対する売却許可決定を求める旨主張するので、以下、順次検討する。

(一)  そこで、まず、本件執行官の前記措置の適否についてみるに、前記認定事実のほか一件記録によれば、少くとも、当初の入札及び開札の結果、センター及び抗告人が同額の入札者であることが判明し、執行官においてその旨を口頭で告知した時点までの手続に誤りがあつたものとは認められない。しかして、この場合、執行官は、規則四九条、四二条一項前段により追加入札をすることになるが、追加入札についても性質に反しない限り入札の規定が適用されるところ、執行官は追加入札の催告をする義務はあるが入札をさせるまでの義務はなく、したがつて追加入札は開札期日に該当者が一人でも出頭すれば期日入札の方法で行われることになる。本件の場合、センター及び抗告人の双方に対して適法に期間入札の通知がなされているから、センターに対する関係でも執行官が出頭した抗告人に対してのみ追加入札を催告し、入札後これを所定の手続に従つて開札したことにも、なんら誤りはないものというべきである。ところで、規則四二条一項後段によれば追加入札の場合、入札人は、先の入札価額に満たない価額による入札をすることができない旨規定されているところ、右規定の解釈上、追加入札について先の入札額と同額の入札をすることも可能であると解される。そうであれば、本件において抗告人は当初の入札額と同額の追加入札をしたものであるが、右入札は右規定に違反するものではないから有効なものと認めざるを得ない。もつとも、本件では、センターは追加入札をしなかつたが、当初の入札価額による買受申出を取り消した訳ではないから、これが抗告人の追加入札額と同額の場合、これを単純に比較して未だ最高価買受申出人と定めることができない場合に該当すると考える余地が全くない訳ではなく、本件執行官の解釈もこれと同一であると思料される。しかしながら、手続の厳正と共に画一化が求められる本件売却手続において、手続の進行上、関係人の出頭と不出頭との間にその差をもうける合理的な理由があるものというべきであり、少くとも適式な通知を受けながら当該期日に出頭しなかつた者は、その期日における手続上の不利益を受けてやむを得ないものというべく、不出頭の関係人の利益を出頭者のそれと同一に扱うべき理由はない。本件の場合、センターは開札期日につき適式の呼出を受けながら右期日に出頭しなかつたものであるから、右開札期日において引続き行われた追加入札につきセンターはその権利を放棄したものと認めるのが相当である。

そうであれば、執行官としては、右追加入札に唯一人参加した抗告人の入札を有効と認め、右開札時において抗告人を本件最高価買受申出人として呼上げるべきであつた。しかるに執行官は前記の解釈に基づき引き続いてくじを実施したものであるが、右以降の手続は法律解釈を明らかに誤つたものと認めざるを得ず、したがつて、右手続に基づいてセンターを本件最高価買受申出人と定めたことは違法であり且つ無効のものというべきである。

(二)  次に、抗告人の抗告の利益について検討するに、法七四条一項は、売却許否の決定によつて自己の権利が害されることを主張する者は執行抗告をすることができると規定し、法七〇条は、右売却許否につき利害関係を有する者は、法七一条の売却不許可事由で自己の権利に影響のあるものについて意見を陳述することができると規定している。したがつて、執行抗告をなしうる者は「権利」の侵害を受けた者であることを要することが明らかである。しかるところ、通常の場合、他人に対する売却許否の決定について、自ら最高価買受申出人であると主張する者については侵害されるべき権利はないというべきであろう。しかし、右主張者が最高価買受申出人であることが当該売却手続上明らかな場合には、例外として右権利性を認め抗告の利益を肯定するのが相当であり、売却手続の公正を保持することになる。本件の場合、センターに対する売却不許可決定が確定するとすれば、改めて売却を実施することになり、右売却において抗告人が再度最高価買受申出人となり得る保障はなく、かえつて、従前の同人の入札額が既に判明している分だけ不利益な条件下に置かれることになろう。しかし、前記判示のとおり、抗告人が本件最高価買受申出人に呼上げられなかつたのはひとえに執行官の手続違背に基づくものであつて、抗告人の責に帰すべき事由によるものではないのであるから、右不利益を抗告人に帰することは、法規に従つて手続が進行したならば当然自己が最高価買受申出人とされ、売却許可決定を受けた筈であるという抗告人の期待権を不当に侵害するものと認めざるを得ない。これを要するに、抗告人は右瑕疵ある手続によつて、本来最高価買受申出人とされるべき権利を不当に侵害されたものであるから、少くとも右瑕疵ある手続前の状態にまで戻すことを求めることができるものというべく、したがつて、抗告人はセンターに対する本件売却不許可決定を取り消した上、売り直しをすることなく、自己に対する売却許可決定をすることを求めて抗告をする利益があるものというべきである。

ところで、一件記録によれば、抗告人は、最高価買受申出人として昭和六二年四月二日に本件入札保証金一四九万円を原裁判所の銀行口座に振込送金し、その際、右保証金の返還がある場合、予めその指定の銀行口座に振込により払渡すことを届出ていたこと、ところが、右保証金は、本件開札期日当日の同年四月九日、原裁判所から抗告人に還付され、同人指定の銀行口座に振込送金されていることが認められる。しかしながら、前記認定のとおり、抗告人は前記開札期日において執行官の採つた前記措置に対して直ちに異議を述べているものであり、右保証金の還付についても抗告人から積極的にこれを求めたものではなく、執行官の前記最高価買受申出人の決定に従つて直ちにいわば事務的に抗告人に還付されており、抗告人において右還付を受けないようにする余地は全くなかつたことが窺われ、これらの諸事情を考察すれば、抗告人が既に本件最高価買受申出人とされるべき権利を放棄しているものとは到底認め難く、右還付の事実は前記判示を左右するものではない。

(三)  次に、執行裁判所において、執行官の決定にかかる最高価買受申出人以外の者を最高価買受申出人と認める場合に同裁判所のなすべき決定について審究するに、規則四九条、四一条二項、四二条によれば、最高価買受申出人は執行官が定めることとされているから、売却許否の決定は執行官の決定に基づいてなされることになる。もつとも不動産の売却の主体は執行裁判所であり、執行官はその補助機関にすぎないのであるが、執行官が法及び規則に従い適切に手続を進行しその結果なされる前記決定は売却許否の決定の前段階の手続として必要不可欠のものである。しかしながら、執行裁判所において右決定に明白な誤りがあると判断する場合には、誤つた決定に基づいて売却許否の決定をすること自体、自己矛盾か又は理由そごの違法を犯すものというべく、かかる場合は、執行裁判所は極めて例外的に、右決定に基づくことなく、独自に適正な最高価買受申出人と認めた者に対し売却許否の決定をすることができるものと解するのが相当である。右の場合、右決定が形式上規則四一条二項及び四二条に違反することとなつても、右違反は売却手続の重大な誤りには該当しないというべきである。なお、抗告人は、この場合、執行裁判所である原裁判所は、センターに対する売却不許可決定と同時に抗告人に対する売却許可決定をなすべき旨主張するが、一回の売却に対し同時に二個の決定が許されるべき法文上の根拠はないから、右主張は採用することができない。したがつてこの場合、執行裁判所のなすべき決定は一個である。

次に、前記認定のとおり、抗告人の納付にかかる保証金は既に同人に対して還付ずみであるが、執行官の前記決定は誤りであるから、これに基づいてなされた還付も誤りであり、執行裁判所としては、抗告人の保証金返還の意思を確認のうえ、その返還を求める余地も残されているものというべきである。

3  以上の次第で、センターを本件最高価買受申出人と定めた本件執行官の処分は法四九条、四二条一項、四一条三項に違背する処分であり、これに基づく原決定も、本来最高価買受申出人とされるべき者でない者を最高価買受申出人として扱い同人に対して売却不許の決定をした違法及び理由そごの違法があるものというべきであるから取消を免れない。しかして、前記認定のとおり、抗告人の納付にかかる本件保証金は既に抗告人に対して還付されているから、当審において抗告人に対する売却許可決定をすることはできず、さらに右保証金、代金納付についての抗告人の意思の確認及び保証金再納付手続についての審理等をさせる必要があるから、本件を原裁判所に差し戻すのが相当である。

4  よつて、原決定は不当であるのでこれを取り消し、本件を原裁判所に差し戻すこととして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官大和勇美 裁判官久末洋三 裁判官稲田龍樹)

別紙執行抗告状

〔抗告の趣旨〕

一 原決定を取り消す。

二 株式会社住宅総合センター代表者代表取締役原秀三に対する別紙物件目録記載の不動産の売却を不許可とし、抗告人に対する売却を許可する。

との裁判を求める。

〔抗告の理由〕

原審は、職権調査の結果、抗告人を最高価買受申出人と認定したうえで抗告人に対する売却許可決定をしなければならないのに、あえてそれをせず、単に、売却の手続に重大な誤りがあるとして株式会社住宅総合センターに対する売却不許可決定をなしたものである。よつて、原決定は違法である。

おつて、抗告理由の詳細は、別に理由書を提出して補充する。

理由書

一 原審決定に至る事実は以下のとおりである。

①抗告人は昭和六二年四月九日午前一〇時の開札期日において原審所属の執行官の開札に立ち合つたところ、株式会社住宅総合センター(以下「センター」という)抗告人の二名が、それぞれ八三〇万円の最高価額で買受の申出をしていた。

②そこで、執行官は、追加入札させることとしたが、センターは出頭していなかつたので出頭した抗告人に追加入札させた。抗告人は、追加入札は従前の価額と同額以上で足ることから、再び八三〇万円で入札した。

③この場合、センターは開札期日に不出頭で追加入札をしなかつたから権利放棄したものとみなすべきであるから、執行官はこの段階で抗告人を最高価買受申出人と決定すべきであつた。ところが、執行官は、前の入札と同額の入札では最高価買受申出人を決定できないと考え、センターを含めくじを実施し、センターが当選したので、同人を最高価買受申出人と定めた。

④原審は、売却許可決定期日に、利害関係人である抗告人の意見を聞き職権調査の上、執行官の最高価買受申出人の決定に誤りがあつたと認め、売却の手続に重大な誤りがあるので民執法七一条七号により、センターに対する売却不許可決定をした。

二 しかし、原審はセンターに対する不許可決定とともに、抗告人に対する許可決定を合せてすべきであつた。その理由は以下のとおりである。

なるほど、原審が、職権調査により、センターに対する売却不許可決定をしたこと自体は、その限りでは違法はないと一応はいえるかもしれない。

(1) しかし、原審のセンターに対する売却不許可決定は、単にそれに止まらず、合わせて抗告人に対する売却不許可決定が黙示になされたと考えるべきである。

なぜなら、本来、抗告人が最高価買受申出人として売却許可決定を受けうる地位にあつたことを考え合せると、売却許可決定期日におけるセンターに対する売却不許可決定には、事実上抗告人に対する売却不許可決定がなされたと同じ効果が生じているからである。そして、後記(3)に詳述するが、抗告人には民事執行法七一条に掲げる不許可事由は存在しないのである。

(2) また、実質的には、原審が職権調査の結果執行官は「抗告人を最高価買受申出人とすべき」であつたとまで判断しながら、センターに対する不許可決定をするにとどめたことは、民事執行法を貫く理念のうち、利害関係人の利益保護や執行手続の迅速性に著しく反し実質的な妥当性を欠くものである。

(3) 前述したところを詳しく述べると、まず、原審は、執行官の最高価買受申出人の決定をやり直す手続が法文上明記されていないため、センターに対する不許可決定にとどめたものと思料する。

① しかし、執行官の決定はあくまで執行裁判所の補助機関としての行為であつて(また独立の執行抗告の対象になる執行処分ともいえない。)、執行裁判所の決定の対象(訴訟物)を申し立て限定するというような性質のものではなく、執行裁判所としては、形式的に、執行官の決定の許否のみの判断をすれば足りるという訳ではない。あくまでも裁判所はそれまでの執行手続の適正を判断して、適正な競売手続を実現するため、売却の許否を決定するのであるから、補助機関たる執行官の最高価買受申出人の決定に拘束されると考える根拠は全くない。

したがつて、抗告人に対して売却許可決定をしても、(それはセンターへの不許可決定と表裏の関係にあり、)仮に抗告人への許可決定には執行官の抗告人を最高価買受申出人とする決定を欠くとしてセンターが執行抗告をしたとした場合にそれは民事執行法七一条七項にいう「重大」な手続の誤りとまでは、いえないのである。

② さらに、そもそも、法の規定がない場合は、裁判所は法の理念に従つて相当な処分ができるはずである。すなわち、売却不許可決定後の手続としては、不許可事由に応じて、裁判所の相当と認める手続をする必要があるが、本件の場合、期間入札等からやり直す必要は全くない。

本件では手続の不適法が生じたのは、執行官の最高価買受申出人の決定段階にすぎないのであるから手続の適法性を確保するためには、利害関係人の行為を必要としない執行官の最高価買受申出人の決定段階以降のやり直しで、足るはずである。

なぜならば、既に抗告人を最高価買受申出人とすべきであつたことが明らかであるから、手続の適正化のために強いてやり直す必要があるのは、執行官の最高価買受申出人の決定と裁判所の許可決定のみである。かりに、期間入札からやり直すとすれば、抗告人ばかりか、債権者債務者とも害することになり相当でないからである。

抗告人は本来、執行官の重大な違法行為がなければ、最高価買受申出人と決定された上、本件物件につき原審で売却許可決定を受けるべきものであつた。ところが、抗告人は本来八三〇万円で落札できたものを、いくらで入札したらよいか(前の入札で最高申出価格が、八三〇万円であつたということは、その物件の適正な入札価格は八三〇万円と推定されるところ、)やり直し後の入札価額を一体いくらにすべきか困惑の極みに陥るばかりかどうしても物件を手にいれるためにはかなりの金額の申出をしなければならないなど経済的な損失を被ることが予想されるのみならず、本件物件の競落すらできないかもしれない地位に立たされてしまうのである。また、国賠法等の手段によつては抗告人の不利益は充分に救済されないことをも合せて考えるべきである。

そして手続の重複による費用的、時間的不経済は、債権者債務者を害することはいうまでもない。

裁判所の側(執行官は裁判所の補助機関である)の手続上の誤りのために利害関係人に不利益を課することは最小限にとどめるべきである。

さらにまた、原審がたとえば、物件の再評価や期間入札等からさかのぼつてやり直す処理をとるならば、上記の不都合は、より強度なものとなり、その違法性はより強度となる。

したがつて、利害関係人の行為を必要としない執行官の最高価買受申出人の決定段階以降のやり直しで、とどめるべきである。そうであるならば、時間的な節約の意味からセンターに対する不許可決定にあわせて、抗告人に対する許可決定をすることにも実質的に不都合ではなかつたはずである。

よつて、手続の適性化のためには、センターに対する不許可決定に合せて抗告人に対する許可決定を為すべきところ、それをせず、抗告人に対し不許可事由がないのに黙示の不許可決定をし、さらに民事執行法の迅速な手続の理念に反しかつ利害関係人の利益を犠牲にした原審の決定には重大な違法があるので、これを取り消し抗告の趣旨のとおりの裁判を求める次第である。

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